「うわあぁあぁあぁ」
見慣れた光景。ランボがリボーンを殺そうとし、全く相手にされず泣きながら10年バズーカの引き金を引く。部屋を覆う煙に多少むせながら、視界を確保すれば。
「……ぇ?」
煙の向こうには、10年後のランボと。
一人の、女性が、いた。
To be is to do
「今日和、若きボンゴレ10代目」
片目を瞑りながら、軽く手を上げ挨拶をする大人ランボ。
「……」
そんなランボの喉元に薄い刃のナイフを突き付けている、黒服の女性。
「えーっと……お取り込み、中……だった、みたい?」
動揺を含んだ綱吉の言葉に、黒服の女性は視線を一瞬ランボから外す。
真っ黒なスーツに、真っ白な肌。それに良く似合う銀灰色の髪と、瞳。まるで映画に出てきそうな風貌の女性に綱吉は息を呑んだ。
「聞き間違いでなければ、今若きボンゴレと、そう言ったかしら」
未だ喉元にナイフを突き付けたまま問う彼女に、ランボはSiとくぐもった声を返した。動く気配の無いランボと彼女。見つめ続けられる綱吉。妙な緊張感の支配する空間を壊したのは、一発の銃声だった。
「いい腕してるな」
いつの間にか窓際に移動していた彼女に向けられる銃口。部屋の中心に落ちている、弾丸が埋め込まれたナイフ。
「リ…」
「師匠!?」
何が起こったのか確認しようとする綱吉の言葉を遮ったのは、紛れもない彼女のもの。
「え? え?」
今彼女はリボーンの事を師匠、と呼ばなかっただろうか? 訳が分からない。唯一説明をしてくれそうな男は……部屋の片隅で震えていた。
「自己紹介がおくれました。私はと申します」
「は、はぁ」
膝を抱えたまま壁に向かって何かを呟いているランボを後ろ目に、と名乗った女性は事の経緯を話し始める。
なんでもはボンゴレファミリーの一員で、リボーン直々に殺しのイロハを教授されたらしい。ランボと一緒に10年前の世界に来てしまったのは全くの誤算だったようだ。
「え、っと……さんはやっぱり……その、殺し、屋……なんですよね?」
綱吉の言葉にあっさりと頷く。
「じゃさっきはランボを?」
殺そうとしていた? とは面と向かって聞けないが、綱吉の問いにはあっさりと肯定の意を返した。
「あまり逃げ回らなければ、こちらに来なくてもすんだのですけどね」
が壁際のランボに視線を移動させれば、殺気を感じ取ったのか面白い程に肩を揺らすランボ。そんなランボをみては軽く溜息をつく。
「まったく、逃げ足だけは早いんだか……」
の言葉を肯定するかのように、大人ランボは皆の目の前で姿を変えた。
「…………」
「…………」
「…………」
「あ、あの?」
小さくなってしまったランボと、そのまま存在し続ける。
「……さん?」
「…………なんで……しょうか」
「ランボ、戻っちゃいましたね」
「そのようですね」
誰も口に出さないが、誰もが抱いている考え。
「がはははリボーン覚悟!」
静寂をうち破ったのは、今回の元凶とも言える人物で。静寂が支配する空間に似つかわしくない声を上げたランボは、案の定黙らされた。
誰に、とは言わないが。
「考えててもしょうがねーだろ。、今日からお前も家庭教師だ」
「は?」
「は?」
リボーンの絶対的な言葉に綱吉が逆らえるハズもなく。
「あ、えっと……お、お世話になります、10代目……?」
不思議な同居人が、一人増えた。
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