ふと目を覚ましたらそこはロストールの家ではなく自陣のテントの中だった。
「夢…………?」
リディアは体を起し、二三度頭を振る。青みがかった白銀の髪の毛が頬に触れた。
ぼんやりした頭が徐々にはっきりしてくる。
そうだ、と一つ思い出した。
私は今、ディンガルとの戦争に来ているのだと。
「いやな夢…………」
レムオンに剣を突き立てる夢。ソレはあながち夢だと言い切れない部分もあって、追い払うようにもう三回ほど頭を振って見たがこびりついて離れない。
悲しくて、辛くて、すぐにでも泣き出したい。
でも、泣いてなんていられない。これから始まる戦争の事を考えても。
こんなところで泣いたら士気が薄れる。
どこか冷静な頭がそうたたき出す。
それに、泣くためだけに生まれ変わったんじゃない。今度こそ、今度こそあの人を助けるのだ。闇に魅入られないように、苦しまないように…………。
私の中にある一つの記憶がいつだって私を苦しめる。それは先の未来の記憶。
こんなものなければこんなに不安にならなくてもいいのかもしれない。
でも、それでも私は…………。
リディアは片手で目を覆った。
まるで泣き出すのを堪えるように。
どうにも今朝は気が弱くなっているらしい。その原因に思い当たり思わず苦笑い…………。
「もう、当分あってないものね。レムオン兄様」
あえればこんな不安蹴散らせるのに!
リディアは細い体をベッドにもう一度投げ出した。
「あーん、兄様に会いたいよー!!」
手足をばたつかせ、子供のようにすねる彼女。そしてソレを目撃して苦笑いを浮かべたロストールの守護神がいた事は本人以外知る由もなく。