後悔はとめどなく私を包み込む。
 選択、行動、結果。全て私のわがままで生み出されたもの。流された血。
 なのにまだ私は偽善的な言葉を吐こうとしている。
 この手はすでに拭いきれないほどの赤に染まっているというのに。
 何を望むのか?許し?断罪?それでも、まだ願っている。
 これは、エゴだ。
 いつかきっと報いが来る。
 分かっていながら、罪を重ねる。自分の為だけに。

 許して下さい、なんて云わない。アナタタチには私を殺す権利がある。
 自分の事だけしか考えない私はきっと醜い女でしょう。私から流れ出る「赤」、はきっとこの上もない程の醜態を晒すでしょう。
 自分が手にかけた者を慕う者の事も考えない、最低な女。
 きっと同じ気持ちなのにね、私と。殺したい程憎んで、自分を嫌って…
 私に出来る事は忘れない事だけ。
 他の誰かが忘れても、私だけは覚えている。
 「罪」を背負う事しか出来ない愚かな私をアナタは笑うでしょうか?

 私に「願う」資格はあるの?

「窓を閉めろ」
 いつもの不機嫌そうな声。
 空は暗く、重く、私の目に映る。
 ふわり、とした感触が肩に触れる。
「風邪を引きたいのか」
 云われてみれば手も足も冷えきっている。何時間空を見ていたのだろう?いつからここに居たのだろう?確か久しぶりに帰ってきて…。
「そもそも俺の部屋で何をしているのだ」
 ああ、そうだ、ここはレムオンの部屋だ。冒険の土産を渡そうと思って、部屋に入ったらいつもいるハズの主人の姿が無かった…。
 そう、帰りを待とうと思って、窓を開けて…
「空が、見えたから」
 レムオンが表情を険しくするのが雰囲気で感じとれる。
 何を馬鹿な事を云っているんだ。って思ってるに違い無い。
 私はかけられたマントに顔を埋め呟く。
「暖かい」
「ならば窓を閉めろ」
 言っても行動しない私に苛立ちを覚えたのか側迄まで歩み寄り自分で窓を閉めた。
「…何かあったのか?」
 反射的に顔を上げ、微笑む。
 以前なら「俺の言葉が聞こえないのか」だったよね、兄さま。
「なんでもないです。ちょっと考え事をしてただけ」
「そうか」
 それ以上聞かない所が貴方の優しさだよね。
 何も言わずにただ、側にいてくれる事の嬉しさ、解る?
 ああ、やっぱり私は諦められない。例え全てを敵に回しても譲れない。きっとこの命が果てても私は諦めきれないでしょうね。

「…寒いと思った」
「だから閉めろ、と云ったのだ」
 ふと、見た窓の向こうには白い粉雪が舞っていた。
 白く、どこまでも白く…まるで私を嘲笑うかのように舞っては落ちる。赤に染まった私にその
「白」はきつすぎる。断罪されてるみたい。
 後ろに立つ兄に少しだけ体を寄せる。
 怪訝そうな顔をしながらもマントを押さえるように私を抱きとめてくれる。
「甘えるな」
「うん」
 回された手にそっと自分の手を重ねて温もりを感じる事を許して。
「暖かい」
 そっと、私はもう一度呟いた。

 後悔は、私を包む。
 だけど私は「後悔」はしない。
 最後の「願い」は決まっているの。誰が、なんと云おうが譲れない願い。
 資格が無い、と罵られたらその「資格」を強奪してでも言葉を紡ぐでしょう。
 私はそういう女。
 全ての罪と憎しみを背負って生きる事を心に決めた。思い上がりも甚だしいけど、それ以外に考えが浮かばないんだからしょうがないじゃない。
 私は私にしか出来ない事をする。例えそれが偽善だとしても。
 その為の、力。
 殺したければ殺して。憎みたいなら憎んで。
 そして、憎んでも、憎んでも、憎み切れなかったその時には、私を愛して…

 私の言葉を、聞いて。

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