「いよいよ明日なのね」
空を見れば満天の星。ここが明日は戦場になるなんて嘘みたい。
「期待してるぜ『剣聖』」
苦笑気味にゼネテスが云う。どこか自虐的に聞こえるのは彼の父親が自害した、という速報が入ったせいかもしれない。なんだかんだ云っても肉親が亡くなったという事実はショックなのだろう。
「うん…期待してよ」
私は艶やか、とも云える笑みを浮かべた。
「功の一つでもたててこい。って云われたからね。ねぇあれってさ心配されたって事なのかな?」
「ま、奴なりに、だろ」
「だよねー。それじゃやっぱ頑張らなきゃ!」
大袈裟にリアクションをするとゼネテスが笑った。
そうそう暗い顔は似合わないよ。
「最近お前さん戦争続きだな」
確かにアキュリュースでの戦争に参加してから1ヶ月と経っていない。
遠回しにツェラシェルの事を云われてるのかな?最近考え方が変わってからは前に比べて楽に生きられるようになった。
今こうしてゼネテスと喋っているのも、明日自分が取らなければいけない行動が分かっているのも全てはあの戦争の御陰だと思っている。
ツェラシェルの御陰で私は正しい判断を下す事が出来るようになった。
「目が覚めたよ」
「何だって?」
「ううん、なんでもない」
私がそういうとゼネテスはそれ以上聞いてこなかった。もしかして彼なら私がツェラシェルを殺したという事実を知っているかもしれない。
「明日は早いんでしょ?もう寝ようか」
「そうだな。なんなら一緒に寝るか?」
「別に構わないよ」
呆気に取られたような顔。それからいつもの仕種で頭を掻く。
こりゃやられたな。笑いながら云うゼネテスはすっかりいつもの彼に戻っていた。翌日計画通り私達はディンガル軍を追った。
「何故ロストール軍がこんな所に!?」
慌てるディンガル兵をなぎ倒しながらアンギルダンの元へ向かう。
後少し。私は自分の考え通りやれるかしら?
腰にある双剣にそっと触れる。
大丈夫、きっと上手くいく。なんとしてでも成功させなければならない。これからの未来の為にも。
前方にゼネテスとアンギルダンの姿を確認して私は走り出した。
私達の前に立ちふさがるディンガル兵を超人的な跳躍力で飛び越える。身軽さならでは、の技だ。
「皆、その兵士は御願い!」
吐き捨てるように叫んで腰の双剣を抜く。
ゼネテス達はまさに一瞬即発の状態だった。そして、時は、来た。