乾いた音が辺りに響き渡る。
無音の世界の中をその音だけが支配した。
誰もが静止し、全ての時が止まる。
次に耳に届く音は人の倒れる音だと誰もが思っていた。
各々の将軍の倒れる音だと…ピシ……
カラン、と金属が地に落ちる音が響く。
続いて又、カラン……。
もしや相討ちか!?
皆がそう思い一斉に音の方に視線をずらす。「あーあ、練鉱石14個無駄になっちゃった」
無音を破ったのは明るい少女の声だった。
「リディア…………お前…」
「お主、一体…」
二人の将が唖然と自分達の真ん中に存在する少女を見つめる。
未だ何が起こったのか把握出来ずにいた。
あの時、互いに切り掛かろうとした。それこそ痛みを長引かせずに一撃で決める為にお互い最大の力を持って。
武器を振りかざして、そして……?
カラン、カラン、と今度は剣の柄を放り投げる音がする。
「何固まってるのよ、二人共」
声に促されるように未だ目線の位置で固定されていたお互いの武器を下に下ろす。止められたのだ。
その事実に気付くまでに数分の時間を要した。
風のように走って来たこの少女に、自分達が渾身の力を込めた一撃が、止められたのだ。
目線を地に向ければリディアの足下はかなり深く沈んでいる。
やはり、止められたのか。
代償は練鉱石で鍛えに鍛えた剣ニ本。
救われたのは互いの命。
「アンギルダン将軍、何ぼーっとしてるんですか?早く撤退した方が良いですよ?」
微笑みながらリディアは云う。
「あ、ああ……皆の者、撤退じゃ!」
云うなり軽やかに巨体を翻しアンギルダンは駈けて行く。
「ゼネテスよ、決着は又今度だな」
「…みたい、だな」
苦笑しながらもその顔は安堵感に満ちている。
視界からディンガル兵が見えなくなった所でゼネテスは尋ねた。
「何故、あんな事を?」
「誰1人欠けても、意味が無いもの」
「?どういう意味だ?そりゃ??」
「言葉通りの意味よ、ゼネテス。皆が居ないと、意味が無いの」
誰にも哀しい思いはさせたくないのよ。
消えそうな声でそう呟いた。
「死に際が引き延ばされただけだ」
「いいじゃないのそれで。私が二人が寿命を迎える時まで引き延ばし続けてあげるわよ」
「ははは!そりゃ良いや!」
「さ、帰りましょう、皆のいるロストールへ」後日王宮で栄誉受賞の際に「栄誉の代わりに練鉱石14個下さい!」と云う発言をしたらしい。
というのはノーブル伯の7不思議の一つだとか。