竜王も倒され平和を取り戻したバイアシオン大陸。
 まさに平和、平和過ぎて退屈してしまうくらいには平和。

「シャリー、シャリってばー」
 明るい良く透き通る声が、この大陸に波瀾をもたらした元凶とも言える者の名を呼ぶ。
 だが彼は「無限のソウルを持つ者とその仲間」によって倒されたのではなかったか?
 しかしぼふぼふぼふぼふ…という黒い闇と共に彼は現れた。
 既に御都合主義が発動しているようだ。
「……珍しいね、よりにもよって「君」が僕の事を呼ぶなんて…消滅したとは思わなかったの?」
 シャリと呼ばれた少年は怪訝そうな顔をしつつも、口元にはうっすらとした笑みを貼り付けている。仕事のプロだ。
「だって貴方は「願い」を叶える為に生まれたのでしょ?ならば私が「願え」ばきっと現れてくれると思ったの」
 なんてったって「私と貴方は対だもの」と彼女は笑いながら続けた。
「…君には負けるよ」
 苦笑しながらシャリが溜め息を付く。
 流石無限のソウルの持ち主。インフィニティアと禁呪の全てとダブルブレードとウルグを獲得してる彼女。ちなみにパラメーターは全て振り切っている。
「で、何の為に僕を喚んだの?」
「うん、実はお願いがあって…」
 竜殺しとかノーブル伯とか剣聖と呼ばれた彼女が珍しく口籠っている。
 それを見ただけでもシャリはなんだか嫌な予感がした。虚無の子にこれだけ冷や汗をかかせられるのはおそらく…というか絶対彼女だけだろう。竜王も瞬殺気味だったし。
「あのね、「ふりだし」に戻して欲しいの!」
「は?」
 彼女の言っている意味を理解出来ずシャリは固まってしまった。
「決めたの、やっぱりあの人の居ない世界なんてつまらないって」
「つまらないって…君ネメアもセラもゼネデスも…てか男キャラと皆「激烈」なんだから誰とでも新しい冒険できるじゃない、ちゃんとフラグもたってるし…」
 攻略本を見ながらシャリが云う。
 彼の手から実在してはいけない攻略本 魔導書を奪い取ってリディアは言った。
「駄目なの、やっぱりこう…冷たそうな人と仲良くなって一緒にラブラブエンドを迎えたいの!」
「わがままだね、君も…」
 はぁ…と心の底から溜め息を付いてしまう
「ならNEW GAMEを選べば良いじゃないか…」
 付き合ってられないよ、僕は…と体全体で表現するシャリ。
「それじゃアンタを呼んだ意味が無いじゃない、いい?私が望んでるのはあの人がいるハッピーエンドなの?理解出来る?つまりね、ぶっちゃけて云えば…歴史と云う名の運命をねじ曲げる、って事よ」

…………やはり無限のソウル、理解可能な範疇を越えている…………
「そ、そう、それで……?」
 ここで口答えしたら殺られる!と即座に判断したシャリ。流石東方の博士。
「でね、お願いしたいのは『今の私の状態で始めからやり直したい』のよ」
「……む、無理だよ……」
「何よ、何か文句あるわけ?親切設計のゲームだと『強くてNEW GAME』あるじゃないの」
 ちゃきっ、とダブルブレードの片方がシャリの喉元に突き付けられる。
「だってさ…」
「アンタ他の人間の願いは叶えるのにこの私の願いは叶えられないって言うの?」
 こ…怖い……
「わ……分かったよ、君の望む通りにすれば良いんでしょ…で、始まりは何処にするの?」
 もうどうにでもなれ…
 後にシャリは語る。僕だって命は惜しかったんです、と。
「ふふ、それはもちろん『黄金色に輝く村』からよ」

 かくして、愛しのあの人となんとしてでもラブラブになるわよ〜v計画は発動したのである。

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