We are such stuff
As dreams are made on ; and our little life
Is rounded with a sleep.
Shakespeare's The Tempest IV.1.156-8

我々は夢と同じ材料で織り上げられている。そして、眠りと共にささやかな人生の幕を下ろす。


夢を見た

「最近変な夢ばかり見るんだ」
 手に持ったペンをくるくると回しながら呟く。
 どうせ彼は、そうなんだ。と他人事な答しかくれない。それを分っているから余計に暗い気分になる。
「僕も最近変な夢を見るよ。まぁ、僕の場合は『夢』というのかどうかも怪しいけれどね」
 思い描いていた彼の解答と違うものが提示されて、僕は一瞬驚いた。
「リドルでも夢って見るの?」
「僕が考えた事ではない事柄を感じている訳だからそれは夢なのではないかな」
「そういうものなの?」
「そういうものだろう」
 リドルの言う事は時々分らない。彼自身が何十年も前の記憶なのだから、しょうがないのかもしれないけれど…。
 こ難しい事ばかり言うかと思えば、時折僕よりも幼いように感じる。
 彼が生きている時もこんな感じだったのだろうか?
「それよりも良いのかい?さっきから全然進んでないじゃないか」
 ほとんど真っ白な羊皮紙を指差し、彼が指摘する。

 だって、やる気が起きないんだ。困った事に全然。
 僕の考えを汲み取ったのか、リドルがあからさまにため息をついた。
「魔法薬学の課題を教えてほしい、と僕を呼び出したのは何処の誰だったかな?ハリー・ポッター」
 リドルの言葉に乾いた笑いで返答する。
「僕だって暇ではないのだけどね?」
 意地悪な顔で僕を睨む。
 僕だって知ってるんだからね!リドルが何もする事がなくて暇している事くらい!
 心の中で毒づいて、苦笑を浮かべた。
 彼に言葉で勝てない事くらい分ってる。ならいかにこちらのペースに持ち込むかが需要になってくるのだ。
「ねぇ、リドルの見た夢って僕が見たのと一緒かな?」
 すっかりペンを置いてしまったハリーに軽くため息をつきながら、たまにはこういう他愛もない話をするのも悪くないか、と気持ちを入れ替える。
「かもしれないね」
「だったら嬉しいな」
「何故?」
「だって、リドルと夢を共有出来たって事でしょう?」
 また、この子供は変な事を。
 今だって自分の時間を奪っている事に気付かないのだろうか?
 確かに夢というのは不思議なものだ。一説にその日にあった事を眠っている間に脳が整理していて、それが夢となって現れるのだと聞いた事があるが。
 ならば僕はハリーの事を考えていた、という事になるのだろうか?
「ね、リドル」
 思考を強制的に中断されて、昔の僕なら即座に力に訴えていただろう。

 でも、今は…それさえも、彼に名を呼ばれるのが心地よいと………

 思って、自身に自虐的な笑みを浮かべる。
 僕も堕ちたものだ。
「ねぇ、リドル?聞いてるの?」
「ああ、なんだい、ハリー」
 自分にすりよってくる小さな子供をそっと抱き寄せる。
 本当、不思議だね君は。僕が殺そうとしていた事なんて、すっかり頭から抜け落ちているんじゃないか?もしかしなくても。
「リドルはどんな夢を見た?」
「僕…?そうだね…どんなだったかな……確か…」

 リドルの良く通る声を聞きながら僕は彼に体を預けた。
 ここは地下で、じめじめしていて、陽の光なんて入ってこないけれど。
 それでもこの部屋を明るい、と感じるのは僕が幸せだからかもしれない。

 こういう他愛もない時間を持つのも、たまには良い。
 今度は何の用がなくても彼を呼び出してみようか?
 言葉では散々言われるだろうけど、きっと彼は今みたく側に居て僕を抱き締めてくれるだろう。
これは予感、ではなく確信だ。

 預けた体から伝わってくるリドルの体温と、緩やかに綴られる声を聞きながら、僕は目を閉じる。





そんな 夢を 見た。


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