恋人同士は目と目で見つめあうだけで言葉を必要としないと言うけれど?
僕が先生に思いを告げてから早1ヶ月。いつもと何も変わらない日々。時々僕は夢を見ていたのではないかと思う。だって先生が僕の思いに答えてくれた、という方が夢みたいなものだし、元々怒りの感情以外を表に出さない人だから授業中は勿論、個人的に会っている時でさえ最小限度の物事しか言わない。
何故この人の事を好きになってしまったのだろう?こんな…口数の少なくて、陰険で、いつも僕を不安にさせるような人を……
ああ、でも…深く暗い、瞳の奥底に時折見えかくれする感情を探るのは好き。「ポッター」
突然名を呼ばれて、僕は慌てて顔を上げる。
「授業で教えて欲しい事がある、と言うからわざわざ教えてやっているというのに…上の空とは良い態度だな?」
ほら…こんな風に何かといえば負の感情ばかり。授業の事なんて口実なのに…
きっと気付いてくれないと判っていてもやはり期待してしまう。
こんな自分が僕は嫌い。
「あ…すみません……」
「ふん…どうせ『解らない事』というのも嘘なのだろう?我輩を騙して何が楽しいのだか」
御得意の皮肉な笑みを口元に浮かべ先生は言う。
僕は先生から視線を背ける事しか出来なかった。本当は違う、と声に出して言いたい。きっと言っても理解してくれるはずがない。僕は…ただ先生と一緒に居たいだけなのに。
一緒に雑談したり、お茶を飲んだり。そんな他愛も無い時を過ごしたいだけなのに。仮にも思いの通じ合った恋人同士じゃないの?言葉が無くても思いは通じあえるなんて、嘘だ。
「我輩は忙しい」
「……ごめんなさい…。お時間をとらせてしまって…」
「ならばとっとと本題を言わんか」
「え?」
先生は自分の脇に置いておいた分厚い本を手にとり、読みかけの部分を探すようにページをめくっていく。そして案の定、読書を始めてしまった。僕はどうしたらよいのか判らなくなってとりあえず今まで広げていた教科書を閉じる。
ただ一緒に居たいだけ、なんて口が裂けても言えるはずが無い。
ではなんと言えば?
考えても一向に言葉が見つからない。どうしよう。沈黙。き…気まずいかも。
「あの、お……お茶でも煎れましょうか?………き、気分転換に………」
「ここに茶器などない」
「あ…」
言われてみればここは地下牢。茶器などあるわけもない。失敗した。
「えっと……こ、今度のクィディッチの試合が心配で…」
「グリフィンドールとスリザリンの優勝争いだからな」
「………」
禁句。
どうすれば、どうしたら…考えれば考える程に頭の中が真っ白になっていく。情けないと思いながらも目尻に溜まりはじめる涙を止める事が出来ない。己でパニックを引き起こして、挙げ句の果てに泣くなんて…なんて軟弱なんだろう。微かに動く頭の片隅で自嘲の言葉を吐きながら僕は溜まる涙を落とさないようにと顔を僅かに上に上げた。
途端、パタン、と本を閉じる音がする。
こんな姿見られたら又何を言われるか…気恥ずかしいのと軽蔑されるのが嫌で僕は先生に背中を向ける。
「まったく…お前は理由をつけないと我輩の元に来られないのか」
え?
後ろに先生の気配を感じ、振り向こうとした途端強い力で引っ張られ、視界が暗黒に染まる。
抱き締められているのだと認識するまでには多少の時間を有した。
「その涙腺の弱さをどうにかしろ」
「すみません…」
指摘されて己がスネイプの服を濡らしている事に気付く。
「理由があるにしろ、ないにしろお前が来たい時に来れば良い。我輩の時はポッター……すでにお前にやったのだから」
嬉しくて、声が出なくて。僕は言葉のかわりに先生の背中に手を回し抱き着いた。
僕が何も言わなくても先生は判ってくれてたんだ。思って、いかに自分が子供であるかを再認識させられた。自分が思ってる事が全てだと思い込んでしまう視界の狭さ。
沢山勉強して、もっと成長していつか…彼に見合うような大人になりたいと思う。恋人同士が何も言わなくても判るというのは、きっと互いが同じ気持ちでいるからなんだね。
僕がもう少し成長したら、そんな関係になれるだろうか?
後日これのギャグ版をアップする予定。
…甘々を目指すとどーーも何かがむずむずして思いっきり馬鹿っぽい作品を
書きたくなってしまうそんな私はギャグ人間。