こんなに疲れているのに眠れなくなってしまったのはいつからだろう?
そう、初めに眠れない時期が訪れたのはシリウスとの手紙のやりとりを始めた頃。何を書こうか今はどうしているか?等と考えているうちに何時の間にか明け方になっていた事が度々あった。
だが今は違う。隣の部屋にはシリウスがいる。寝ているかどうかは判らないけど物音一つしないのでおそらく眠っているのだろう。僕はシリウスの眠りを妨げないように気を付けながら、小さく息を吐き出した。
今日もこのまま朝まで眠れないのだろうか?
また、シリウスに迷惑をかけてしまう。
自分でも何が原因なのかさっぱり判らない。でも眠れないのだ。昼間はシリウスと一緒に庭の手入れをしたり、料理を作ったり、体は動かしている。よく脳が疲れていないと眠れないというけれどちゃんと宿題もやったから疲れていないはずがない。
では何故?
寝返りをうって体勢を変えてみても一向に睡魔は訪れない。
そうだ、こういう時は……確か……。そう、羊の数を数えれば良いんだっけ?羊が1匹2匹…………………………………………………………………
よけいに眠れなくなってしまった。誰だよ、羊をの数を数えると良いなんて言ったの。悪質なデマ情報だ。やるせない怒りのせいで余計に目が冴える。
今夜何度目かも判らないため息をついて僕は気分転換に窓を開ける事にした。
夏にしては多少肌寒い風が頬を掠める。
「はぁ……どうしちゃったんだろう、僕……」
最近は夢も見ていない。
ようやく意識が落ちた、と思ったら朝の目覚めの時間。
どうせ眠れないのならば原因究明に一夜をあてるのも良いかもしれない。
よし、考えてみよう。まず寝れなくなったのはいつからだったっけ?ホグワーツにいた時はちゃんと眠れていた。ではこちらに帰って来てからは…?
1日目は寝れていた。そうだ、眠れなくなったのは2日目からだ。
じゃあその日は何があったっけ?
確か……そうそうルーピン先生が遊びに来ていたんだ。それで一緒にアップルパイを焼いて…シリウスが何処かに出かけるんで僕と先生で留守番をしていて……それで?ああ、そうそうお茶を入れて、何時間もお喋りしてたっけ。あれ?何も眠れない要因がないぞ?
うーん。もう一度思い出してみよう。
ルーピン先生と何を話したんだっけ?………先生が居なくなった後の学校の事とか…先生が今何をしているのか、とか……ロンとハーマイオニーの事とか…………
「あ」
そうだ。恋の話だ。「先生、そういえばね最近皆がロンとハーマイオニーはデキテル、って言うんだよ」
「へぇ…あの二人がねぇ。ハリーはどう?好きな人は出来たのかな?」
「僕はルーピン先生とかシリウスとかロンとかハーマイオニーが好きだよ」
「違うよ、ハリー。likeじゃなくてloveの方だよ」
「それは…」
「ああ、悩ませてしまったみたいだね、ごめん。今度会う時までに、で良いよハリー。答はそう簡単に見つかるものではないから、ね?」あの台詞のせいだ…。それしか考えられない。僕はきっと先生と別れてから無意識のうちに「好きな人」の事を考えているに違いない。
原因が判ればあとは簡単。答を見つけてしまえば良いだけだ。そうすればまたゆっくりと眠れるはず。
「良し、頑張るぞ!」
自分の出した声の大きさに慌てて口を塞ぐ。
もしかして………
僕の思考は、部屋の扉を叩く音で中断された。
「ハリー?どうしたんだい?大きな声を出して。何かあったか?」
シリウスが心配そうな顔をして部屋に入ってくる。
ああ、やっぱり起こしちゃったんだ。ごめんなさい…。
「ううん、ただ眠れなくて…ごめんなさい」
「何か悩みごとでも?私に出来る事があれば言ってくれ」
どうしようシリウスはああ言ってくれるけど…。
暫く考えた後、僕はシリウスの言葉に甘えて不眠症の原因と思われる問題を解決するために協力してもらう事にした。
「実はね……」