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午後は七瀬さんと色々興味深い事を話し、放課後は先日と同じ様に皆守と下校した。今日こそあの墓の下を暴いてやる、と心の中で闘志を燃やしながらグラウンドを歩いていたら、隣に居る皆守が陸上部の練習をつまらなそうに眺めていた。
「陸上部の連中もよくやるぜ。ぐるぐる同じ場所を走り回って何が楽しいんだか。お前もそう思わないか?」
その問いに思いっきり肯定したら、そこまで賛同されても…と逆に引かれてしまった。素直じゃない奴め。偶には自分の感情に素直になってみても良いのに。よし、ここは一発俺が……。
語りモードに入ったその時、突然悲鳴らしきものが聞こえた。声のした方に視線を向ければ、何かから逃げるような行動を取る取手。見えないモノを追い払うような、そんな切羽詰まった雰囲気の彼に、思わず足が止まる。
どうした?と声をかけてもなんでもない、と返す彼。
あんなに怯えていたのに何も無い訳ないだろう…と思うのだが、誰にでも踏み込んでほしくない領域というのは存在する。後から来たルイ先生に彼の事を聞けば、どうやらお姉さんの死が関係しているらしい事が分かった。
しかし…死そのものを忘れてしまっている、というのは…どういう事だ……?
「あたしたちで、取手クンの力になってあげよッ?ね?」
友達思いのやっちーと。
「そんなもの誰の力も借りずに自分の力で乗り越えていくべき事だろ?」
突き放した考えの皆守。
どちらの言い分も一理ある。
だけれど…。
「許されるならば、俺は手を差し伸べてやりたいと……そう…思うよ」
先の見えない暗闇に立つ恐怖を知っている。
底の無い暗闇を見る悲しみを知っている。
だからこそ、許されるならば。
「お前は甘いんだよ」
「かもしれないね」
嫌がるか?お前なら。
余計な首を突っ込むな、との警告を最後に皆守は先に帰ってしまった。
俺の考えを受け入れろとは言わない。だが…望む事を諦める事は、とても悲しい事だ。
皆守、お前の望みは……許されないのか?
部屋に帰り夜に向けての準備をしていたら一通のメールが届いた。H・A・N・Tを起動して確認すれば差出人は皆守。何かあったのだろうか?と慌てて文面に目を通せば、先程のやりとりの謝罪と、墓地には自分も行くとの旨が書かれていた。律儀と言うか、なんというか。
文面を打っている時の彼の表情を想像すれば、思わず苦笑が漏れる。きっとブツブツ言いながら書いていたに違いない。
「さーって、と」
探索に必要と思われるアイテムを積み込んだベストを着込んで。
「いっちょ頑張ってみますか」
帰ってきた時とは違い、軽い足取りで俺は自室を後にした。
「よっと」
長いロープを伝って降りた先には、広大な空間が存在していた。まさに遺跡、という単語がしっくりくるような建造物。
無理矢理落とされたやっちーと皆守が話しているのを横目に、今自分が居る場所を確認する。この場を言い表すならば…広間、といったところか。所々に扉が見受けられるが、錠のような物が掛けられているので今は未だ探索出来ないようだ。
目の前の扉には錠が掛かっていない。…となれば、本日の探索はここから、というになる。
「んじゃ二人とも、気合いを入れて行ってみますか」
重苦しい扉を開けば冷たい空気が流れ出してくる。…広間といい、この場といい…嫌な氣だな。胸の内で呟きながら、慎重に足を進めていく。
各所に巡らされた仕掛を解き、最深部を思われる場所で彼に出会った。
墓から出ていけと警告してくる彼に否定の意を返せば、戦闘へと発展する。
「な、何あの黒い砂」
「気を付けろ……何か、来るぞ」
H・A・N・Tが警告を鳴らす。この感覚はヘラクレイオン神殿の時とまるっきり同じだ。手早く弾薬を補充し、来るべき敵に備える。今回は二人の協力もあって、なんとか無傷で倒す事が出来た。…やれやれトレジャーハンターも楽ではない。
倒した敵が数枚の楽譜に変わる。
どうやらこれは取手の特別な思い入れがある品らしい。…なんにせよ失われていた物が戻って良かった。暗い遺跡から外に帰還すれば、空気がとても美味しく感じる。
「君は何者なんだ?」
彼の問いに対する答えは、一つしかない。
「俺は葉佩九龍。……トレジャーハンターさ」
芝居じみた口調で言えば、取手が薄く微笑んだ。
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