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一夜明けて…。
…結局ほとんど眠れなかった。
あの後色々ギルドサイトを調べていたり、銃の手入れ等をしていたら気付いた頃には朝日が昇っていた。少しは眠る予定だったのに……。集中すると時間の感覚がずれてしまうのは昔からの悪い癖だ。分かってはいても直せないというのが厄介だが。
「葉佩クンおはよう!」
前方から元気な声が降ってくる。
「あ、八千穂さんおはよう、今日も元気だね」
俺の言葉に、勿論でしょ。と気持ちの良い答えが返ってくる。
「そういえば今日も遺跡に行くんでしょ?」
彼女の言葉に今度は俺が、勿論。と答えを返した。
するとどうだ…一緒に連れて行ってくれと言うではないか。どんな危険が待っているのかも分からないのに、女の子を連れて行くのは躊躇われる。素直にその旨を伝えれば、連れて行ってくれなければ俺の秘密を皆にバラすと脅してきた。これは…もう諦めるしかないのか…?
最近の女子は積極的だねぇ、とどこぞの中年男性のような事を考えながらも渋々承諾する。
「あ、そうだ」
今度はなんだろうか?
「あのさ…もし、葉佩クンが嫌じゃなかったら……今度から渾名で呼んでも良い?」
「別に構わないよ。それじゃ俺も八千穂さんの事そうやって呼ばせてもらうね」
嬉しそうな笑みを浮かべて、改めて宜しく。と言われればこちらも嫌な気分はしない。
「九チャンこれあげるッ。みんなには内緒だよ?」
やっちーからプリクラを貰ってしまった。お礼を言ってから手帳の開いている欄にプリクラを貼っておく。この時はまだ、手帳がプリクラ帳に変わるとは思ってもいなかった。
やっちーと別れた後、廊下に落ちていた石を拾ったら変な人物に話しかけられた。黒塚と名乗った彼は、どうやら遺跡研究会という部活の部長をやっているらしい。石を舐めてみたくならないか?と返事に困る質問等を頂いたが、なんとかやり過ごした。
この學園の生徒って皆ああいう風にキャラクターが濃いのか…?
悩みながら廊下に立って居たら、今度は雛川先生に声をかけられた。俺の体調が悪いとでも思ったのか、大丈夫?と声をかけてくれる。良い先生だなぁ…本当。
雛川先生が去った後も、俺はぼんやり考え事をしていた。
…あ、この香りは…。
独特なラベンダーの香りを纏っているのは、彼しかいない。
振り返れば、自分の予想が的中している事を確信した。
相変わらず気怠そうな雰囲気と眠そうな目。だがな…皆守。俺を騙すにはまだ少し役不足だよ。過去に色々な人と出会い、共に過ごして来た俺を騙そうと思うならもう少しばかり防衛線を濃くしないとね。彼が俺の事情を知っている訳はないので、無理と言えば無理な話だが。
でも、まぁ…お前が望むなら騙されたままでいてやるのも悪くはない。
今は…まだ、な。
「そういえばお前《宝探し屋》なんだって?」
突然言われた単語に、俺は盛大にこけた。
やっちーと心の中で叫びながら、表面上だけはなんとか取り繕う。
「いや、なんていうかね…別にトロ職人でも良いんだけどさ」
「はァ?何意味不明な事言ってるんだ……頭大丈夫か?」
もう泣きたいですよ。本当。
「いや、あのさ…」
突然聞こえてきた耳をつんざくような悲鳴。
音楽室の方かららしい、と判断し俺達は急いで悲鳴の聞こえた方に向かった。
倒れていたのは手が干涸らびた女子生徒。…やはり、というかなんというか…。波瀾万丈な生活の幕開けという感じだな。原因は分からないがこのままにしておいて良いハズがない。
保健室まで運んで行けば、入り口で顔色の悪い生徒と出会した。彼は取手というらしい。完結に自己紹介を済ませれば、側で皆守が保険医を呼ぶ声が聞こえた。
「煙草を吸い終わったら診てやろう」
白いチャイナ服を身を纏った、一見保険医とは似付かない容貌の彼女。余裕綽々といった感じの彼女に、皆守は急患なのだと声を大にして叫ぶ。なんだかんだいって良い奴だよなぁ本当に。
患者の様態に一通り目を通した後、彼女は劉瑞麗と名乗った。
「……劉…?」
「私の名は何か変か?」
「あ……ああ…い、いえ。友人に同じ名字の奴がいるもんで」
中国ではきっと多い名字なんでしょうね、と慌てて付け足せば、そういう事にしておこう。と意味深な台詞を吐かれた。…もしかして俺も皆守の事言えたぎりじゃない…?
多少の自己嫌悪に陥っていた俺に皆守が突然こんな事を言った。
「お前にこいつをやろう」
渡されたのは一枚のプリクラ。
「……」
「……」
「………」
「………」
「…………」
「…なんだよ、いらないなら返せ」
俺からプリクラを取り上げようとする皆守の目の前で、目にも止まらぬ早さで手帳を開き、プリクラを張り付けそのまま学ランの内ポケットにしまった。
「一生の宝物にするよ!」
「……勝手にしろ…」
諦めたのか、はたまた呆れたのか。恐らく後者だろうが、皆守はそのまま何処かへ歩いて行ってしまった。
これぞまさしく、ゲット・トレジャーってやつだな!
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