「隠された謎も、いまここに存在する遺跡も、何もかも」
 大広間に降り立ち朗々と言葉を述べれば、発せられた音が反響して辺りに響き渡る。
「考えた事はないか? 感じた事はないか?」
 両手を広げ語り続ける様はまるで喜劇のようだと、自分自身を嘲笑えば後ろの彼の狼狽振りが面白い程に伝わってくる。
「全てのことには意味がある。偶然と思われた事柄も、積み重ねればそれは必然と成りうる」
 アリエナイなんて事はないのだ、と。
 一切口を出してこない彼に向かって謳うように紡ぎ続ける。
「いくら飾ってみても、所詮俺は《墓荒し》な訳で」
 何故か落ち着かないと感じるのは、嗅ぎ慣れたあの香りが無いせいだろうか。
「九龍」
「考えた事はないか? 全てはあらかじめ仕組まれていたことなのだと」
「…九龍…?」
「感じた事はないか? 総てはあらかじめ決められているのだと」
「何が、言いたいんだ」
 苛々とした空気を醸し出してくる彼に、まぁ待てよと言葉を掛ける。
「真実なんてものは人の数だけ存在する」
 その逆も然り。
 目の前にたゆたう緩やかな光。
 数ヶ月前までは存在しなかった石版。
「何故俺はここに来ちまったんだろうな」
 何故お前という存在に出会ってしまったのだろう。
「これが真実か? 用意された未来か?」
 自虐気味に言葉を紡ぎ続ける俺を、黙って見守る彼。
 時間が無い事は解っている。
 動くべきか、動かざるべきか。
 俺はこの遺跡の謎を解き明かすだろう。
「真実は人の数だけ存在すれど………事実は、一つしかない」
 お前はどう思っている? どう、感じている?
 この光景を見て、今何を考えている?
「用意されたモノをすんなり受け入れてやるほど、俺も出来た人間じゃないんでね」
 この地に戻ってきたのも、黒塗りの塊を操作するのに慣れてしまったのも、あの頃からは考えつかない事柄だし。
 それでも、何かの力が作用しているのでは、と思わずにはいられない。
 お前は俺に遭ってしまって、どう思ったのだろうか。
「聞いてもいいか?」
「何をだ」
 問いかければ的確に帰ってくる返事に思わず笑みが漏れる。
「どうしたい?」
「…主語が抜けてるぞ」
「死にたいか? 死にたくないか?」
「……」
「例えば俺がこの先の区画で息絶えたら、お前はどうする? 死ぬか、死なないか?」
「お前は、どうしたいんだ」
「さぁ…どうなんだろうな?」
 道連れにしたいのか、生還して欲しいのか。
「道連れにしてやろうと思っても、多分死にものぐるいでお前を逃がすんだろうなぁ」
 血だらけの手で自分は帰る方向を示すのだろう。
「なら、守ってやるよ」
「……」
 予想外の嬉しい言葉に息が詰まった。まさか彼からその単語を聞く事が出来るなんて。
「今すぐ死んでもいいかも…」
「はァ!?」
 きっと今の自分は緩みきった表情を浮かべてるに違いない。彼と向き合ってなくて良かった、と心底思った。
「さぁって、と」
 用意された謎と、用意された真実と。
 まるで人をパズルのピースの如く扱う、現実、という名の馬鹿げた空間を。

「気合いをいれて、壊しに行こうか。皆守」
 言いなりになる玩具ではないのだと、解らせてやろうじゃないか。

 最後の石版が放つ光を見つめながら、右手に持った拳銃のトリガーをゆっくりと引けば、聞き慣れた音と香りが包み込む。

 壊してやろう。この空間を。
 そして言ってやるのだ。彼を縛る《世界》、その全てこそが玩具なのだと。

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